the architect sketch

「建築家のスケッチ」
　私が建築をモチーフに絵を描いたのは、《小説の建築》(2013)というシリーズ以来、久しぶりの事だ。前回のシリーズでは、夏目漱石の『三四郎』の文章中の建築を描いた。漱石の文章表現は明解であったが、小説から形や色にする難しさを感じた。その一方、曖昧な根拠から生まれてくる造形の魅力を感じた
と記憶している。
　今回、建築家・安井武雄氏が描いたスケッチに出会い、同氏が建築空間を構想するプロセスで描き出した線を頼りに油絵を制作させていただく機会を得た。建築を構想する時点でのスケッチを選んだのは、漱石の小説を絵にした時のような難しさと魅力があると考えたからだ。
数多くある安井氏のスケッチを拝見していると、建築の全体像だけでなく、タイルの配置、デスクのデザイン、門扉の装飾など、細部の造形にとても惹かれる。建築と人との間を繋いでいるものは、このような眼に馴染むものたちなのかもしれない、そんな感覚に包まれた。

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Picture from one scene. Architecture in a novel